日本ワインの産地 近畿

日本ワインの産地 近畿

 

 

1.近畿地方のワイン産業概要

日本有数の美食の都である大阪を中心に、近畿地方には個性的なワイナリーが点在しています。大阪や奈良といった都市部に近接し、ワイナリーはアクセスの良さを生かしながら独自のスタイルを追求しています。近畿地方のワイナリーは、歴史ある老舗から都市型の気鋭ワイナリー、さらににごりワインの先駆者やクラフト系新規参入など、さまざまなアプローチでワイン造りを行っています。これらのワイナリーは、地元産ブドウを生かしたワインの製造に取り組み、美食を楽しむ地域の文化と融合した独自のワインスタイルを確立しています。

 

2.近畿地方のワイン造りの歴史

大阪府のワイン造りは、実は日本でも有数の歴史を誇ります。安土桃山時代からブドウが栽培されていた記録があり、明治時代には本格的なワイン造りが始まりました。明治11年(1878年)、堅下村(現柏原市)に甲州ブドウの苗が導入され、栽培が盛んになり、大正時代には果樹園が規格外のブドウを活用するためにワイナリーが設立されました。昭和初期には大阪府内のブドウ畑の面積が800ヘクタールを超え、全国でも有数のブドウ産地となり、最盛期にはワイナリーの数は119軒にも達しました。しかし、1959年の伊勢湾台風や1961年の第2室戸台風による甚大な被害を受け、さらに急速な都市化の進行によってブドウ畑は減少しました。それでも、100年以上の歴史を持つ「カタシモワイナリー」をはじめ、大阪や京都、滋賀など近畿地方各地でワイン造りが根強く続けられ、現代に至っています。

 

3.近畿地方の主なワイン産地とワイナリー

 

 

大阪府

大阪では、デラウェアが主な品種であり、栽培面積は全国第3位となっています。大阪府柏原市に位置する「カタシモワイナリー」は、大正3年に創業された100年を超える老舗ワイナリーで、今も地元の伝統的なブドウ栽培を継承しています。また、大阪市中心部には都市型ワイナリーの先駆けとして「島之内フジマル醸造所」があります。このワイナリーは、近隣の農家と協力してブドウを仕入れ、街中でワイン造りを行うことで、消費地に近いという特長を生かした独自のスタイルを提供しています。

 

京都府

京都府には、丹後地方や京丹波町にワイナリーがあり、地元の食文化に寄り添うワイン造りを目指しています。特に「丹波ワイン」は、京都の食材に合うワインを提供することを重視しており、地元のテロワールを生かしたワインを生み出しています。

 

滋賀県

滋賀県では、にごりワインの先駆者として知られる「ヒトミワイナリー」があります。このワイナリーは、濾過をしない無濾過のにごりワインを製造しており、ユニークな風味が人気を集めています。また、栗東市では日本酒メーカーが運営するワイナリーがあり、酒造技術を応用した新たなワイン造りが行われています。

 

4.近畿地方のブドウ品種と栽培

近畿地方では、デラウェアが主力品種であり、特に大阪府のブドウの大部分を占めています。デラウェアは丈夫で病害にも強く、温暖な気候に適応しやすいため、大阪や奈良で多く栽培されています。また、ブドウが成熟する8月には収穫が完了するため、台風の被害を受けにくいことも栽培が続く理由です。近年では、マスカット・ベーリーAやメルローなどのワイン用ブドウも増えつつあり、地域に根ざしたブドウ品種の多様性が進んでいます。

 

5.近畿地方の都市型ワイナリー

大阪市内に位置する「島之内フジマル醸造所」は、都市型ワイナリーの先駆けとして全国的に注目されています。2013年に設立され、街中にワイナリーを構えることで、地元農家との連携を図りながら、都市住民にワイン造りを身近に感じてもらうことを目指しています。畑では、農薬の使用を抑え、ナチュラルな製法でワイン造りを行い、ブドウ本来の風味を生かしたワインを提供しています。このような都市型ワイナリーは、都市と農村をつなぐ新しい形のワイン文化を醸成しており、地域の魅力を再発見するきっかけにもなっています。

 

6.まとめ

近畿地方のワイナリーは、長い歴史を持つ老舗から都市型の革新的なワイナリーまで幅広く、伝統と革新が共存するエリアです。美食と観光を楽しむ近畿地方ならではの独自のワイン文化が育まれており、それぞれのワイナリーが地域のブドウ栽培を守るための取り組みを続けています。都市部からアクセスしやすい立地にあるため、観光と共にワイナリー巡りを楽しむことができるのも魅力の一つです。地域の食文化と一緒に味わえる、個性豊かな近畿地方のワインをぜひお試しください。