日本ワインの産地 新潟県

 

1.新潟ワインの概要

新潟県は日本海に面する南北に細長い地形を持つ県で、海洋性気候と内陸部の寒暖差が大きい盆地気候が入り混じる複雑な気候条件が特徴です。このため、新潟のワイン産地は地域ごとに土壌や気候が異なり、造られるワインも多彩です。県内には現在10軒のワイナリーがあり、日本ワインの生産量は391キロリットルと全国で6位を占めています(2019年時点)。特に注目されているのは「新潟ワインコースト」と呼ばれるエリアで、地元の砂質土壌が独特の風味を生み出し、観光地としても人気を集めています。

 

2.新潟ワインの歴史

新潟のワインの歴史は、1890年に上越地方で川上善兵衛がブドウ栽培を始めたことに遡ります。川上は「日本のワインブドウの父」として、当時の環境に適した品種を模索し、1万回以上の交配を経て「マスカット・ベーリーA」などの重要な品種を生み出しました。こうした川上の功績によって、新潟は日本ワインの歴史において欠かせない土地となりました。

 

第二次世界大戦後には、米に代わる特産物としてワインが注目され、岩の原葡萄園に続いて南魚沼市にもワイナリーが設立されました。しかし、2000年までは県内のワイナリーはわずか3軒に留まっていました。日本ワインブームにより2000年以降からはワイナリーが増加し、新潟ワインコーストなどの新たな産地が形成されていきます。このエリアでは、地域活性化のために設立された胎内高原ワイナリーや、地域特性を生かしたワイン造りに挑むワイナリーが集結し、新潟ならではのワイン産地としての地位を確立しつつあります。

 

3.新潟ワインの主な産地

 

新潟ワインコースト

新潟市の南西部、角田浜や越前浜周辺に集まる「新潟ワインコースト」は、砂質土壌が特徴のワイン産地です。このエリアでは1992年に「カーブドッチワイナリー」が設立され、ヨーロッパ系ブドウ品種を使用したワイン造りが始まりました。カーブドッチの開設後、この地の潜在力に魅せられたワイン造りの志を持つ人々が続々と集まり、ワイナリーが次々に開設されました。現在、新潟ワインコーストはその美しいブドウ畑やワイナリーの景観が観光地としても人気を集め、ブドウ畑を眺めながらワインを楽しめる施設も充実しています。

 

また、新潟ワインコーストのワイナリーはすべて自社畑を持つ「ドメーヌ型」のワイナリーであり、収穫したブドウを使用して醸造を行うことにより、地域の風土を反映したワイン造りを実現しています。砂地の水はけの良さが、ブドウの根を深く張らせ、ミネラル豊かな味わいをもつワインを生み出しており、魚介との相性が抜群な「海のワイン」としても注目されています。

 

胎内市

胎内市に位置する「胎内高原ワイナリー」は、地域活性化を目的として2007年に設立されました。標高約250mの粘土質の畑でヨーロッパ系品種を中心に栽培しており、栽培エリアは「だしかぜ」と呼ばれる風が強く吹き、通気性が良く乾燥しているため病害が少ないのが特徴です。ツヴァイゲルトレーベという赤ワイン品種がこの地で特に高く評価されており、冷涼な気候のもとでの豊かな果実味が、地域の特色を生かしたワインとして評価されています。

 

南魚沼市

南魚沼市には、ブランド米で有名な地域にワイナリーがあり、1970年代後半からブドウ栽培が行われています。豪雪地帯ならではの特性を生かし、冬季にはブドウの樹を地面に寝かせて雪の下で越冬させる「垣根仕立て」という方法で栽培されています。この方法は、厳しい冬をしのぐ工夫として実施されており、ブドウの樹を守りながらも、夏には昼夜の温度差によって糖度の高いブドウを育てることができます。メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンなどのヨーロッパ系品種がこの地で栽培され、力強い味わいのワインが生み出されています。

 

4.新潟ワインの主な栽培品種

新潟のワイナリーは、土壌や気候に合わせた品種を栽培し、地域特性を生かしたワイン造りに取り組んでいます。代表的な品種は以下の通りです。

 

マスカット・ベーリーA:川上善兵衛によって開発された日本の重要な赤ワイン用品種で、華やかな果実香が特徴。

 

アルバリーニョ:砂質土壌に適応し、新潟ワインコーストで栽培されている白ブドウ。ミネラル豊かで酸味のある味わいは、魚介料理と相性が良い。

 

ツヴァイゲルトレーベ:胎内市で栽培される耐寒性に優れた赤ワイン品種で、果実味とバランスの良い酸味が特徴。

 

カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ:南魚沼市を中心に栽培されており、豪雪地帯特有の方法で越冬し、糖度が高く凝縮感のある味わいが生まれています。

 

8.海のワイン「アルバリーニョ」の可能性

新潟ワインコーストでは、特に「アルバリーニョ」というスペイン原産の白ブドウ品種が注目されています。アルバリーニョは、スペイン北西部のリアスバイシャス地方で栽培される「海のワイン」として知られ、砂質土壌に適応し、ミネラルを多く含むことから魚介料理に合うとされています。リアスバイシャス地方と新潟の環境は降水量や土壌が似ているため、新潟のアルバリーニョもその特徴を生かした「海のワイン」としての可能性が期待されています。

 

9.まとめ

新潟県は、気候条件や土壌に挑みながら、地域特性を生かしたワイン造りを続けています。歴史ある「岩の原葡萄園」から新興の「新潟ワインコースト」まで、どのワイナリーも試行錯誤しながら新潟らしさを表現するべく、独自のブドウ栽培と醸造に取り組んでいます。新潟のワイン産業は、地域活性化にも寄与しつつ、土地の個性を反映した魅力的なワインを国内外に発信しており、今後もその成長が期待されています。